建物名よみ:らんざんかんとりーくらぶはうす
設計:天野太郎研究室  (天野太郎、1918年~ 1990年)。改修設計:メグロ建築研究所 竣工:1961。改修工事:2010年~
構造:鉄筋コンクリート造一部鉄骨造、耐震壁付ラーメン構造  ・ 地上 2階建て  (地下 1階)  
延床面積:竣工時2,005㎡。現況2,626.96㎡m2
主な用途:ゴルフクラブハウス
所在地:埼玉県嵐山町鎌形1146

見学の可否:見学には事前予約と連絡が必要
駐車場:施設利用者専用 無料駐車場あり
https://www.ranzan.cc/
http://meglab.jp/
メディア等紹介履歴:【『現代日本建築家全集13』、住宅建築2017年2月号】【BELCA賞受賞(ロングライフビル推進協会賞)】【DOCOMOMO JAPAN】

ゆるやかな起伏の地形に低く長い水平の屋根が映える。薄く黒い屋根と白いベランダと1階の厚い壁、その間に挟まれたガラス戸などがグリーン上に浮かんで、ゴルフ場の華やかさを感じさせる。建物両端の円を思わせる曲面は建物の随所に現れる。フランク・ロイド・ライトの下で学んだ影響やアルヴァ・アアルトを思わせる照明付きのトップライトが目を楽しませる。高度経済成長期を経てきた建物は増改築を繰り返してきた。ゴルフプレーヤーの変化、女性会員の増加、構造的な補強・設備更新などの直面する課題に対して、オリジナルデザインを尊重した保存改修のプロジェクトが2010年から開始した。オリジナルデザインを活かし、時には復原・試作したりして、オーセンティスティを追求している。新たに加えられた1階の玄関は厳かにして暖かく迎える雰囲気、2階のラウンジは傷んだ床面を張り替え、耐震性を加味した柱部分の改善などを重ねて、見通しのきく広いラウンジが再現した。建具、家具などが十分吟味されて整えられている。それらを大きな暖炉が見守っている。

維持管理、運営の特徴

 所有者と運営団体:嵐山カントリークラブ  
過去の大規模改修など:2010年にマスタープランを策定して、無理のない工事実施を予算面と工事方法や期間等について慎重に検討して進めている。会員への丁寧な説明と理解を高める行動に取り組んでいる。こうしたことを可能にしているオーナー・施工会社白石建設・メグロ建築研究所が一体になって対応する体制が注目される。第30回のBELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物である。今後も更に改修には10年かかるのではと言われているが、様々な問題に対する複合的な解決方法に取り組んでいる姿勢は今後のリノベーションを進める好例である。  

「アマチュアゴルファーにとっての聖地を求めて」というスローガンを掲げ、会員に対して聖地のあり方を問いかけながら、リノベーションを進めている。

 

周辺の見どころ

関東平野をぐるりと囲む丘陵地帯の一部である比企地域は起伏に富み、歴史的建造物や現代建築などが点在している。嵐山町には嵐山町立嵐山幼稚園(旧日本赤十字社埼玉県支部旧社屋)、東松山市内には華麗な彫刻で飾られた箭弓神社がある。比企地域では2021年に「比企の近代遺産」と題して点在する建造物を巡るイベントを実施した。このような地域に内在する様々なテーマにする企画は毎年行われている。


当初の姿(写真提供:メグロ建築研究所)