リノベーションとは、既存の建築物を新築時の目論見とは違う次元に改修することをいう。(国土交通省ホームページ)

《清水義次》は「リノベーションまちづくりとは、遊休化した不動産という空間資源と潜在的な地域資源を活用して、都市・地域経営課題を複合的に解決していくこと」と定義している。リノベーションは、古い建築物の機能を今の時代に適したあり方に変えて、新しい機能を付与することになるので、【訪ねたい・使い続けたい建築】と重なる部分が大きい。そこで、埼玉県内の旧日光街道宿場街での主な取り組みを南から草加宿、越谷宿、幸手宿の順に紹介する。

草加宿

草加市は、2017年【そうかリノベーションまちづくり構想】を策定し、草加駅東口の旧日光街道草加宿があった地域をモデル地域に設定。有休不動産のオーナーと若い事業オーナーを結ぶリノベーションスクール(2019年までに4回実施)を開催するなどして、有休不動産の活用を図っている。

(写真1)は、【蔵カフェ中屋】。築150年の蔵をリノベーションしてカフェ&レストランとして活用。蔵のオーナーと3人の娘さんが経営している。蔵は外装、内装ともに丁寧に手がいれられ蔵造りの良さが美しくよみがえっている。

(写真2)は、地場の美味しい野菜料理とお酒を楽しめるバル【スバル】である。18年前に閉店した寿司屋の空き店舗をリノベーションしている。旧寿司屋のオーナーと草加市生まれの若い店主を結び付けたのは第1回のリノベーションスクールであり、スクール第1号店でもある。間口はそれほど広くないが、全面をガラス戸にして優しい光が外にあふれる感じの良いお店となっている。

(写真3)は、【よろずキッチン恵登屋】。蔵と酒屋をオーナーがリノベーションし、日替わりの飲食を提供するレンタルキッチンを経営している。蔵は道路側に開く下屋が付きベンチも置かれていて、まちにやさしい造りとしている。次は越谷宿。地元ハウスメーカーとNPOが連携してリノベーションした事例を紹介する。

(写真4)は、2016年にオープンした【まち蔵(まちづくり相談所 油長内蔵)】である。㈱中央住宅がこの蔵のある屋敷を買い取り戸建住宅地の開発を行う際に、曳家移転と改修を行い市へ寄贈したものである。寄贈に当たっては、NPO法人越谷住まい・まちづくりセンターと越ヶ谷商工会議所、中央住宅(ポラスグループ)が構成団体となる「油長内蔵運営協議会」を立ち上げ、協議会が「まち蔵」の管理運営を市から指定管理者として受ける仕組みを作っている。ハウスメーカーが自ら施工しただけあって改修工事の質は高い。しかしコミュニティ施設として自由に使うための「蔵からの用途変更」は、建築基準法の適合義務が課題となっている。

越谷宿

(写真5.6.7)は、2018年オープンの【はかり屋】である。旧日光街道沿いの旧大野邸秤屋(1905年築)を㈱中央住宅が買取り保有。㈱中央住宅がまちづくり会社へ有償で貸出し、まちづくり会社がサブリース事業としてこだわりショップやレストランが入った古民家複合施設【はかりや】として運営している。古民家再生のリノベーションは、調査、設計をまちづくり会社(メンバーの地元建築士)が担当し、施工と費用負担をオーナーの㈱中央住宅が行っている。改修工事費用は30年で回収する事業スキームだという。間口が狭く奥行の長い短冊状の敷地の特徴を活かした魅力的な路地空間を整備し、複合施設の有効利用を図っている。

幸手宿

日の出(写真8)

最後に(写真8)の幸手宿の【日の出】を紹介する。【日の出】は、長く空き店舗となっていた木造2階建ての建物を、2018年の官民連携まちづくり塾(草加リノベーションスクール)に参加した地元建築士のメンバーが立ち上げた【家守舎日の出】が、地元のオーナーから借受けリノベーションしたレンタルスペース《2020年オープン》である。週の3日をボードゲームカフェ、残りの4日を地域コミュニティスペースとして利用している。リノベーションした建物は、入口を廃業した地元公衆浴場で長く使われていた建具を活用し、懐かしい雰囲気の店構えとなっている。リノベーションの具体的な工事は、隣町にある日本工業大学の学生や地域の子どもたちも塗装工事に参加するなど、地域参加型で進められた。

旧日光街道沿線でのリノベーションまちづくりは、紹介した3市以外にも、杉戸町や春日部市などでも取組が始まっており、「訪ねたい・使い続けたい建築」が次々と誕生することを期待したい。

文・写真:古里実

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