蕨市立北小学校の通学区域を範囲とする北町地区が1971年に国の「コミュニティモデル地区」に指定された際、整備実施計画で各コミュニティー共同施設として位置づけられた施設のひとつである。市民会館のほかに公民館、青少年ホームを併設する。このうち公民館と青少年ホームは1972年に先行して建設された。建設にあたっては市民会館建設懇談会を設置して、市民の声を反映するような取り組みがなされた。外観は赤茶色のレンガタイルとコンクリート表しを主とする垂直方向に注目した意匠で、内部は吹き抜けのエントランスホールを中心に各室へ動線が分かれる。設計は土屋巌が手掛ける。土屋は建築家 前川国男のもとで実務を学び、独立後は埼玉県内で公共建築の設計を数多く手掛けた埼玉をゆかりとする建築家を代表するひとりである。ちなみに建物銘板は織物関係事業者の寄贈によって設置されており、蕨が「織物のまち」として栄えていた歴史を語る残す数少ない記録のひとつでもある。
維持管理、運営の特徴
所有者と運営団体:蕨市施設管理公社
過去の大規模改修など:2001年 外壁改修工事、2007年 エレベーター改修工事、2017年 耐震補強等工事、2020年 空調設備等改修工事等。2020年9月~2023年10月までホール等を除いた大部分を市役所建替えのため、市役所仮庁舎として利用中である。敷地内・建物内に入る際には事前に申し出ること。ただし市役所仮庁舎部分は開庁時間内であれば出入り可能である。
周辺の見どころ
敷地と隣接する旧蕨城址公園はかつて蕨城があった場所で、その一部が埼玉県から1961年に旧跡の指定を受けている。建物敷地は戦中、ダンスホール「シャンクレール」の運営者、河野静が居を構えた住宅があったほか、日本車輛蕨工場(工場は北足立郡芝村(現川口市芝園)に所在)の独身寮や社宅用地となった歴史も持つ。公園には成人式発祥の地を記念した「成年式発祥の地記念像」と詩人 サミュエル・ウルマンの「青春」を始めて翻訳した蕨市出身の実業家 岡田義夫氏の業績を記念して設置された「青春の碑」がある。
文:高松 写真:STEP-image太田