《池原義郎》(いけはら よしろう、1928年~ 2017年 )は埼玉県内に多くの建築を設計している。年譜では19棟あり、特に所沢聖地霊園などの建物が所沢周辺に集中している。
コンクリートと鉄材に着目して県内の建物を訪ねてみた。
壁の存在を高らかに謳う建築:池原が師・今井兼次の助手として関わった【遠山記念館美術館】、高床の白壁の蔵のイメージ。コンクリート壁のコーナーの曲面が柔らかい。その後に初期の最高傑作・【所沢聖地霊園の礼拝堂・納骨堂】(1973年)。そして、【早稲田大学所沢校舎本部棟】(1987年)に続く。自然保護活動の強いなか地形を巧みに読み込んでコンクリート造の壁を主体としてデザイン。コンクリートを薄い壁にして軽く使ったり、面として重く使ったりと自由自在。光の受け止め方が際立つ。本部棟は、シンボリックな形態と平面計画をしている。渦巻のような平面、その中心の盛り上がった部分が塔になっている。丁寧に地形を読んで、校舎という繰り返しの多い巨大な建築に、学生たちの動線を考えた変化を随所に入れている。(写真1.2.3)
一方、鉄材とガラスの構成による緊張感を味わう建築:デザインは【西武園ゴルフ倶楽部ハウス】(1991年)、晩年の【熊谷文化創造館】(1997年)へつながる。【ゴルフ倶楽部ハウス】(1991年)正面のフレームが宙に飛び出した正面は気分を高揚させる。ロビーの階段付近には光が満ちている。2階に上がると、天井を布で柔らかく包み込む。多摩湖畔に立つ【掬水亭】(1990年)は鉄の線材とコンクリートのバランス、きめ細かなディテールが満載だ。【早稲田大学所沢キャンパス・アクアアリーナ】(1991年)は、室内温水プールは鉄骨で、入り口付近はコンクリートの表現。【熊谷文化創造館(写真4.5)】は荒々しい煉瓦壁と鉄材とガラスの軽やかさが広々とした農地の夕日に映える。ここではあえて丘の駐車場を作り、空中を渡るデッキでガラスのガレリアの2階に入る。
県内の建物を振り返ってみると、日常をぽんと飛び越えるデザインが満載の建築だと思う。
建物名 | 竣工年 | ||
---|---|---|---|
岩窟ホール(長野県) | 1970年 | 外部リンク | |
所沢聖地霊園 | 1973年 | 写真 | |
西武ライオンズ球場 | 1979年 | Wiki | |
松ヶ丘の家(自邸) | 1986年 | ||
早稲田大学所沢キャンパス | 1987年 | 諸元ページ | 写真 |
早稲田大学所沢スポーツホール | 1990年 | 外部リンク | |
中国割烹旅館 掬水亭 | 1990年 | 写真 | |
西武園ゴルフクラブハウス | 1991年 | 写真 | |
早稲田大学アクアアリーナ | 1991年 | 外部リンク | |
早稲田大学所沢キャンパス第2ホール | 1992年 | ||
北九州大学(福岡県) | 1995年 | ||
西武園競輪場 | 1997年 | Wiki | |
熊谷文化創造館 | 1997年 | 諸元ページ | 写真 |
酒田市美術館(山形県) | 1997年 | 外部リンク | |
ガレリアかめおか(兵庫県) | 1998年 | Wiki | |
新青森県総合公園青い森アリーナ(青森県) | 2002年 | Wiki | |
アルテリアしもだて美術館(茨城県) | 2003年 | 外部リンク | |
ゑしんの里記念館/恵信尼公御廟所(新潟県) | 2005年 | 外部リンク | |
いしかわ総合スポーツセンター(石川県) | 2008年 | Wiki |
文:若林祥文 写真:若林祥文、STEP-image太田まさお