川越蔵造りの町並み(北に向かって歩くと、札ノ辻交差点にでる)(写真1)

川越蔵造りの町並みはどう歩いても楽しい。訪ねるたびに新しい発見がある。

今回はこの蔵造りの町並みを過ぎて、札ノ辻の交差点に出る。そこからさらに北上すると角に凛とした佇まいの【氷川神社旭舎文庫↑】(写真2)がある。かつてはちょっと軒が垂れ下がっていたような駄菓子屋だったが、川越氷川神社の参道の入り口にあたるということで神社が取得して、地域文化の情報発信の場として運営している。

【川越氷川神社】は現在、広場を設けたりしてゆったりとした境内の再整備中である。本殿の豪華な彫刻を拝見したい。氏子10ヶ町の山車を飾る人形に共通した彫刻がぐるりと飾られている。氷川の杜の後ろには【ヤオコー美術館】《伊東豊雄設計》(写真3.4)が浅い水辺に囲まれている。 再び、蔵造りの町の方へ戻るが、途中に【弁天町横丁】に立ち寄る。昔の色街の名残が残る狭い道路の両側に歯抜け状態の長屋が立ち並ぶ。元氷屋さんの冷蔵庫もある。現在次のリノベーションが取り組まれているようで、手作り工事中。人力車もやって来た。【ギャラリー&カフェ 二軒堂】などこの空間づくりを楽しむお店ができてきた。

蔵造りの町並みを構成している建物は江戸時代生まれから平成生まれまで多種多様。確かあの看板建築は平成生まれだったと思うが、ずうっとそこにあるような良い面構えをしている。軒を並べている奥行きの深いお店に入ってみると、お宝が潜んでいる。細長い敷地を住みやすくしていくには相当の知恵が必要だ。坪庭の設え、屋根の傾斜角度、建具のデザインなど洗練された佇まいだ。

町並の入り口にある【銘菓龜屋本店↑】(写真4)に入り、モダンなインテリアの上を見ると物凄い木組みがある。裏の【山崎美術館】に立ち寄り、この町が育ててきた文化に触れることができる。

銘菓龜屋本店(写真4)

東の方に行って、【旧山崎家別邸】(写真5)を訪ねる。《保岡勝也( 1877年~ 1942年)》が心を込めて設計した珠玉の住宅建築だ。大胆な和としっとりとした洋の調和が感じられる。保岡は大正・昭和にかけて活躍した建築家で、和洋に詳しく興味深い。当時の新しい住宅建築の考え方で庭園も設計している。この邸宅は管理も行き届いていて気持ちよく味わうことができる。

ちょっと、北上して【川越市立博物館↑】(写真6)で川越の歴史を深堀りしてみることもお薦め。

西に戻り、蓮馨寺の参道に当たる【昭和の町】、【大正浪漫夢通り】と交差した先に、現在整備中の旧織物市場がある。楽しみだ。【大正浪漫夢通り】に戻る。この通りの町並みは蔵造りの町並と一味違っている。

今、この町や周辺のいろいろな場所でリノベーション的な取り組みが進行している。その中でも大工町で《株式会社80%》が取り組むプロジェクト大工町長屋【すずのや】が面白い。その「頑張らない、ちょっといい一日」のキャッチフレースに共感できる。

さて、川越の今を伝える複数のメディアは洒落ているので、街角の書店を覗く。「小江戸ものがたり」は老舗的な存在、ちょっとだけ昔のことを今の視点で掘り下げている記事が興味深い。ameba「小江戸川越style」は深掘りした取材記事が満載。「コエドノコト」は軽快に街の出来事を伝えている。

文:若林祥文 写真:若林祥文、STEP-image太田

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