まち歩き(進修館・笠原小学校・町立図書館・新しい村)2021年11月20日、宮代町の「訪ねたい使い続けたい建築」を見て回るまち歩きについて、みやしろ市民ガイドクラブの手島亙さんにご案内いただいた。

手島さんによると、『地域の風景を織物に例えれば、まちの縦糸と横糸がほつれないよう糸の交点を補強したのが、【進修館】【笠原小学校】【町立図書館】【新しい村】の各施設であり、その交点を辿るのが、まち歩きのコースとなっている』とのこと。

進修館
進修館(写真1)

まずは【進修館】東武動物公園駅西口*1から徒歩5分の好立地にある。《1980年竣工、象設計集団の設計》によるコミュニティセンターである。町の依頼はシンプル、世界のどこにもないものをつくることであったという。設計手法は徹底的な地元調査により場所の固有性を呼び覚ますこと。発見的な方法から独創的な形が導かれている。

富士山と筑波山を結ぶ軸と敷地の南北軸の交点を中心にする【円形芝生広場】を囲む同心円のプランが誕生している。(写真1) 建築が成立する場所の特性を読み込むことで、歴史的視点に基づいた場所の固有性が呼び覚まされる建築的アプローチである。ヴァナキュラーな建築につながる。それが、町民に愛される建築を生む。

絡まるツタが味わい深い(写真2)

町の軸線となる南側の道路から進修館を臨む。鋭角に空を指すデザインの光路の棟とガラス面を囲む躯体に絡まるツタが味わい深く美しい。(写真2)進修館はどこからも入れて、どこへでも抜けられるプラン。隣のスキップ広場には、町民公募によるデザインで設計された三角形のガラス屋根を載せた明るい【公衆トイレ】《1996年》がある。その向こうには、【宮代町役場庁舎】《2004年、みやしろ設計連合共同企業体設計》が見える。(写真3、4)この庁舎には一般的に一緒に建てられる町議会の議場が無い。隣の進修館の小ホールが、町の議場にもなる。この日は議会開会前ということで、議場に設えられた小ホールを見学できた。三角錐の背もたれが高く伸びた、まるで魔法使いが座るような椅子が円座に並ぶ。(写真5) 進修館の他の椅子やテーブルなどの家具も方圓館の手触り感がある独特のデザインがされていて楽しい。必見である。

町の軸線の道路を南西に進むと突き当りに【宮代町立笠原小学校】《1982年》が見える。こちらも《象設計集団》の設計である。子供達から「竜宮城みたいな小学校」と呼ばれている。赤い顔料が混ぜられたコンクリートの柱や壁のレンガ色は、今も味わいがある。(写真5)

「学校はまち、教室は住まい」というコンセプトで計画された校舎の屋根は、切妻瓦葺きで教室棟ごとに分節され、美しい家並みとなっている。(写真6) 教室と広場をつなぐ半屋外の廊下は、天井も高く気持ちが良い。柱や壁には、いろはカルタや都道府県名、宮沢賢治の詩などが浮き彫りにされていて、楽しい学びの空間になっている。(写真7)

笠原小学校の南隣にあるのが【町立図書館】《1994年竣工、和建築設計》である。入口のすぐ横に児童図書、奥に一般図書、中央に受付、その南面に新聞、雑誌コーナーとう明快なプラン。南面の破風下のテラスが気持ち良い。(写真8)堀上げ田のある笠原沼側からのファサードも設計者の工夫が感じられて面白い。(写真9)笠原沼の先にあるのが【新しい村】《2001年、象設計集団グループ設計》である。【新しい村】は、【山崎山】と呼ばれていた里山を、「農」をテーマに学び・遊べるようにした農業公園である。農産物販売所やショップに囲まれた円形のテラスでは、地元産の食材でつくられたランチが楽しめる。(写真10)こちらの写真が予約しておいた当日のお弁当。ヘルシーでとても美味しい。(写真11)

帰りは、東武動物公園側脇の道を使い、笠原小学校の北側を眺めて、今日の公共建築巡りを振り返りながら、進修館へ戻った。今日のまち歩きは、冒頭の手島さんの言葉のとおり、宮代町の風景の交点を補強する公共建築のデザインの力を堪能できる大変充実したコースであった。地元市民ガイドクラブの方と歩くと一層理解が深まる。みやしろ市民ガイドクラブに関する問い合わせは、進修館受付窓口で行っている。(進修館HP→

*1:東武動物園公園駅西口駅前広場北側の敷地に、【無印良品 東武動物公園駅前】が《2021年9月》にオープンしている。この店舗は、シェアキッチンとしての【みんなの台所】や、レンタルスペースとしての【Open MUJI(学び舎) 】、情報収集・発信拠点としての【まちの案内所】を設置し、さらに店舗の前にある約1,200m2の芝生広場【みんなの広場】も併せて整備するなど「地域コミュニティ貢献型」の特徴がある。(写真12、13、14)

文:古里実 写真:古里実、STEP-image太田

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