遠山記念館は、水田の中に続く屋敷林を背に2500坪の敷地に邸宅と庭園からなる。その主屋は、1936年に竣工した重要文化財に指定されている近代和風建築。美術館は建築家・今井兼次(1895年~1987年)の晩年の作品である。白い壁の高床の建物で、明り取りになっていた越屋根が緑の合間から見える。ロビーはロマネスクの雰囲気が漂う静謐な空間で、萩原碌山(守衛)作の「女」の彫刻に相応しい環境が整えられている。展示室は左右の2室であり、こじんまりしているが濃密な展示空間を感じる。
維持管理、運営の特徴
所有者と運営団体:公益財団法人遠山記念館
過去の大規模改修など:建物は丁寧に維持管理されているが、越屋根のトップライトからの自然光を美術品保護への配慮のために閉じる改修を行った。
日本文化の普及にあたり、質の高い発信を行っている。節句時の雅な雛段飾りは必見。新型コロナのために多くのイベントは縮小しているが、本館の建築案内する企画、邸内の茶室でのお茶会、レコードを鑑賞する会、投扇興の会などがある。日本庭園は丁寧に整えられていて、日本建築の空間構成を楽しめる。大きな門の前にある濠には蓮の花が夏の頃には咲き誇る。
周辺の見どころ
川島町の空中写真を見ると自然堤防上に線状の農業集落が発達していることがわかる。近くには街の中心的な拠点が川島町役場庁舎(大宇根建築事務所、2015年)を核にしてつくられ、隣の平成の森公園では四季の花々を楽しめる。
写真:若林