宮代・進修館シンポの打ち合わせの時に、公共的な利用をしている建物についていろいろと議論をしていた。パネラーの手島さんがデザインの「奇抜さ」をいう前に、その建物が愛されているかどうかがポイントと発言されたと受け取った。名建築はデザインが素晴らしいことがまず第一だが、その上で、愛されるのかどうか。2つの事例を取り上げてみたい。
1 嵐山カントリークラブハウス
【嵐山カントリークラブ↑】は県内のゴルフ場の中でもアマチュアゴルフに力を入れている名門として知られている。1962年に《天野太郎氏》によって設計された水平線を活かした軽やかな建物。高度経済成長期を通じてゴルフ競技は大きく隆盛し、会員の増大など需要に対して増築などが逐次行われた。しかし、現在、この嵐山カントリークラブでは将来を見通すクラブハウスのあり方がまとめられて、建築当初の姿に戻す目標が掲げられ、着実に実施されている。当然、女性会員向け設備の充実、耐震補強などが慎重にかつ大胆に検討されていく。そのためにオーナー、施工会社、建築家の3者ががっちりと体制を組んで、会員たちの様々な意見に対して丁寧な対応をするとともに、無理のないリノベーションを進行管理している。当初は10年で終了すると考えていたというが、もう10年は必要らしい。 アマチュアゴルフの聖地としての取り組みは続いていく。
2 宮代町の進修館の取り組みをどう捉えるか。
宮代に住んでいる方の中にも【進修館】は知っているが、中に入ったことがないという方が多くいるという。建物は動かないから、関心を高めていくにはここでの活動を発信していくことが重要だ。自治会単位で地域のアーカイブズを「まちのアルバム」作りをアウトリーチで行い、個々に集まってもらうマルシェ、イベントなどの参加を誘うソフトな取り組みは意味がある。ここに来ていただいた方にこの雰囲気を味わってもらう、知ってもらう。
一方、建物は経年劣化していく。公共施設であっても所有者・管理者である自治体の予算が乏しく、なかなか修繕などが追いつかない。マイナスのスバイラルに陥らないように注意したい。
特徴的な取り組みは、「進修館ファンクラブ」を立ち上げた。住民に限らずこの進修館を愛してやまない人たちをこの指とまれ方式で集めて、出来ることをしてもらう。小さな修繕や清掃など手の届く範囲であれば、やってみる。実は進修館では毎年、元町長である齋藤甲馬を偲ぶ会を年に2回開催してきた下地がある。多種多様な取り組みをどう編んでいくのかが重要なポイントだ。
文:若林祥文 写真:メグロ建築研究所、若林祥文、STEP-image太田